Lunisolar 11「白い布のロンド」

「気に入ってるモノを手に入れようとしたら、たまたま都合が良かっただけだ」

トリスタンの言葉に驚いて、でも私も言葉を返さないと、と思って口を開こうとした瞬間に、トリスタンの唇が私の唇と重なっていた。
柔らかくて、温かくて……なぜだろう、もっとしてほしくなる。

トリスタンのそばにいるのは昔から好きだった。一緒にいる時にはそっけなくされることがあっても、絶対に私のことを見捨てて置いていってしまうことのない優しいトリスタン。
でも去年の夏も、その前も、離宮ではそっけなくされて、私が入ってはいけない部屋に閉じこもっていたから、近くに寄らせて貰えなかった。昔のようにお昼ごはんを持って、朝から遠出をするようなこともなくて、唯一、離宮のすぐ近くの草原まで気晴らしに付き合うように2人で馬を走らせただけで、トリスタンはあっという間に離宮から都に帰ってしまった。だから今日は、話をすること自体、久しぶりのことだった。なのに、こんなのって……

でも、はしたなくてもいい、かなと思ってる私はきっとどうかしてる。どうかしてるって思うけど、好みにはとてもうるさいトリスタンが、私のことを気に入ってるって言ってくれた。
その言葉だけで、泣いてしまえそうなくらい、私はうれしい。余計なことなんて、考えなくても良かったのかなって。

トリスタンの舌が私のと絡み合ってくちゅくちゅと音を立てる。さっきのキスよりももっと長い時間のキス。2人の荒い息が余計に私の背中をぞくぞくさせる。さっきは恥ずかしくなってほどいた腕をまたトリスタンの首に回して、置いていかれないように必死で抱きついていた。

荒々しい手つきでコルセットが緩められて、ドレスの胸の部分だけ下に引き下ろされた。露わになった胸の頂を指先で転がされたり摘ままれたりするのがくすぐったい。でもなんだか優しく胸を揉まれていると、キスをしていた時と同じくらいぞくぞくしてくる。
ドレスのスカートがたくし上げられて下着も取られた。さわさわと足を撫でていた指が茂みの奥へと伸びてきて、何か得体のしれないところに触られてぞくっとする。思わず「ひゃっ」なんて変な声が出たら、耳元にトリスタンが笑う息がかかってまたぞくっとした。
私の中に指が差し入れられて、トリスタンの指先がかき混ぜてくる。指が動くたびにぞくぞくしてふわふわする。自分でも触ったことのない、誰にも見せない場所のことなのに、トリスタンに触られるのは嫌じゃない。もっと触ってほしい。もっとキスしてほしい。
「シルヴィア、わかる? すごく濡れてる」
「キスが良かった? それとも、期待してる?」
いじわるな声と一緒に、トリスタンの指にどこかを擦り上げられてまたぞくんとした。目の前が真っ白くなる。白いシーツが私の上で踊ってるみたいに。

今度はさっきまでとは違って、熱い棒がぐいっと押し入ってきた。身体が真ん中からメリメリと割かれるような感覚。痛い痛い、イタイ。
「痛いか?」
「いたい、けど。でも、へいき」
心配そうだけど、どこか満ち足りた顔のトリスタンで私も幸せになれる。痛いけど、抱きしめらて落とされるキスでごまかせそう。
ゆるゆるとした抜き差しの回数を重ねるうちに、トリスタンの指が中で動いていた時のように、あの背中の奥の方がぞくぞくする感覚を感じるようになってきた。
「なんか、へん、なの。ふわふわして」
「そのうちそれが良くなる」
会話が出来たのはそこまでで、トリスタンに突き上げられるたびに「ひゃ」とか「うん」とか「あぁ」とかいう声しか出せなくなった。痛さと中で動いているトリスタンがわかる感覚と何とも言えないふわふわした気持ち。よくわからないけど、嵐のよう。
私に触れるトリスタンの手も身体も温かくて、すき。トリスタンのことがすき。

目を開けたら、部屋の中が薄暗い気がした。シーツにくるまっていた私は、どこにやってしまったのかコルセットもドレスも身につけてなかった。
一緒に居たはずのトリスタンはどこに行ってしまったのか、もうどこにもいなかった。王太子が公爵家でこんなことしてたのがわかったら、それこそ婚約の話は破談になったりしないのかと心配になる。トリスタンならどうにでもしてくれるだろうけど。
私の隣はまだほんのりと温かくて、きっとここにトリスタンが居たんだと思えた。身体に力が入らなくて起き上がることができないのも、トリスタンと一緒にいたことは嘘じゃないと教えてくれているようだった。

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